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ガストは、なぜミセスと組むのか。推しの「好き」を食べるコラボ

シェフの技術で選ばせる企画から、好きな人の好みを食べる体験へ。過去のガスト、ローソン、ミスタードーナツの施策と比べ、藤澤涼架とのコラボの狙いを考えます。

食卓、音楽、六枚の皿を組み合わせた生成イラスト。実際のコラボ商品や出演者を描いたものではありません

ガストがMrs. GREEN APPLEの藤澤涼架さんを“シェフ”に迎える。10月22日からの「Chef RyoChan」を見て気になるのは、人気バンドだから集客できそう、という話の先です。[1] 料理の専門家ではない人に、なぜメニューを任せるのか。以前のガストのシェフ企画と、ローソンやミスタードーナツがミセスと組んだ企画を並べると、ファンにとっての食事の意味が見えてきます。

01 以前のガストは、シェフの技術を食べる理由にした

2024年11月、ガストは白金台「L’allium」の進藤佳明シェフが監修した「至福のフレンチコース」を発売しました。当時の価格は税込1,990円。前菜、スープ、メイン、デザートをそろえ、身近なガストでフレンチを体験できる企画でした。[2]

2024年のガスト「至福のフレンチコース」の告知。料理を大きく並べ、進藤佳明シェフの姿とレストラン名を添えている。
画像引用:すかいらーくホールディングス「至福のフレンチコース」発表資料(2024年11月20日)。当時の告知ビジュアル。画像を押すと拡大できます。

告知画像でも、コースの料理を大きく並べ、その隣にシェフの姿とレストラン名を置いています。「誰が監修した料理なのか」が、まだ食べたことのない味への期待を支える見せ方です。

ここで料理を選ぶ理由は分かりやすい。「プロの技術を、この店で、この価格で味わえる」という期待です。一方、今回の藤澤さんが持ち込むのは、料理人としての経歴ではありません。本人の思い出、メンバーの好物、ファンとの関係です。同じメニュー開発でも、お客さまが食べたくなる理由が変わっています。

02 ローソンとミスドにも「メンバーの好みを食べる」があった

2025年7月のローソン×ミセスでは、メンバーが好きな具材を選んだミックスサンドを販売。焼そばとたまご焼、ベーコン入りポテトサラダとブロッコリーなど、本人の好みが商品になっています。[3]

2026年夏のミスタードーナツも、メンバーが昔から好きな定番商品をアレンジ。「Ringo Jam」のロゴを思わせるりんご型のドーナツや、好きなドーナツを組み合わせたパフェを展開しました。[4] 食品の名前にバンド名を付けるだけでなく、「その人は何が好きか」を食べられる形にしています。

この共通点が面白いところです。ファンは、味を予想して選ぶのに加え、好きな人と同じ好みを試せる。「この組み合わせが好きなんだ」と知ること自体が、食べる楽しみになる。楽曲を聴くこととは別の、少し日常に近い接点です。

過去の企画 商品に持ち込んだもの
ガスト/2024年 プロのシェフが監修するフレンチの技術と体験。
ローソン×ミセス/2025年 メンバーが選ぶ、好きなサンドイッチの具材。
ミスド×ミセス/2026年夏 メンバーが昔から好きな定番商品と、ファンクラブの世界観。

03 ミセスの大きな入口を、藤澤さんの個人的な話へ絞った

規模の面では、ミセスは2025年のBillboard JAPAN年間アーティスト・チャートで首位。2年連続の年間首位となっています。[5] 多くの人が知るバンドと組むことは、企画を知ってもらう入口になります。ただ、それだけなら、メンバー全員を並べる広告も考えられます。

今回、藤澤さんを前面に出す意味は、ガストとの個人的な接点にあります。上京当時から通い、親しんでいたチゲがコラボ料理のもとになった。さらに大森元貴さんのイタリアン好き、若井滉斗さんの梅好きも料理に取り込んでいます。[1]

Chef RyoChanの公式告知。コック帽の藤澤涼架さんを中央に大きく置き、大森元貴さんと若井滉斗さんが左右で食器を持つ。手前にはコラボ料理が並ぶ。
画像引用:すかいらーくホールディングス「Chef RyoChan」発表資料(2026年10月21日)。今回の告知ビジュアル。画像を押すと拡大できます。

実際のビジュアルは、コック帽の藤澤さんを中央に大きく置き、ほかの二人を食べる側として左右へ配しています。料理を手前に並べながら、まず目に入るのは三人の役割。「誰が、誰のために作るのか」が一枚で伝わる構図です。2024年のシェフと料理の見せ方に比べると、今回はメンバー同士の関係が、味への興味をつくっています。

つまり、バンドの知名度を入口にしながら、中身は「藤澤さんがメンバーやファンに食べてほしいもの」という一人の視点でまとめる。全員の好物を知っている本人が案内役になるから、料理の説明がメンバーの話にもなる。この絞り方は、人気者を大勢並べるよりも、食卓で話しやすい企画に見えます。

「りょうちゃんの思い出の旨辛チゲ鍋セット」の公式商品画像。チゲに別添えのチーズソースをかけ、キンパとオリジナル敷紙を添えている。
画像引用:すかいらーくホールディングスの同発表資料に掲載された「りょうちゃんの思い出の旨辛チゲ鍋セット」。公式の商品イメージ写真。画像を押すと拡大できます。

その話が具体的な一皿になったのが、このチゲです。発表資料では、上京当時に親しんだチゲに豚バラ肉を合わせ、チーズソースなどで味を変えられると説明されています。写真では、料理の下の敷紙やキンパの旗まで企画の意匠でそろえています。本人の思い出を知ってからこの皿を見ると、料理の内容とファンとして楽しむ仕掛けを、別々に受け取らずに済みます。

04 ガストが欲しいのは、話題から店へ来る理由

すかいらーくの2026年8月の経営メッセージには、IPコラボなどで来店動機をつくり、新しい顧客の獲得とアプリ会員化につなげる方針があります。[6] 今回も、話題を見てもらうだけでなく、ガストへ足を運び、対象料理を選んでもらうことが事業上の狙いと考えられます。

その点で、店内BGMやフォトパネル、グッズは料理と別々の飾りではありません。店へ行く楽しみを増やし、食事中にもファン同士の会話をつくるものです。取締役CMO・CIOの平野曉さんも、藤澤さんの思いを店で過ごす時間全体から感じてもらいたいと説明しています。[1]

グッズは前半と後半で変わり、マグカップや皿などを組み合わせるとテーブルセットになる設計です。[7] 続きを集めたいという再訪の動機も読み取れます。ローソンが購入とアプリのスタンプをつないだように、ファンの楽しみを企業側の利用してほしい行動へ結び付ける構造があります。[8]

05 面白いのは、ファンが入口でも、料理が脇役になっていないこと

過去の企画と比べると、ミセスとの食品コラボで使われているのは、知名度に加えて、メンバーの好みや関係性を商品にできることです。今回のガストには、さらに本人がその店で過ごしていた時間が重なります。

そこに、この組み合わせの強さを感じます。ファンが食べに来た先で、ガストにもともとあったチゲや食事の記憶へ戻ってくるからです。ファンの関心を借りつつ、店の料理も好きになってもらう余地がある。 このつながりがある企画は、単にグッズを受け取って終わる企画より気になります。

一方、コラボが終わった後もガストを選ぶようになるかは、別に見たいところです。限定グッズを集めたくなることと、店を好きになることは同じではありません。過去のローソンやミスドの施策は仕組みを比べる材料であり、今回の売上や再訪を約束するデータではない。今回の企画で確かめたいのは、そのファンの時間が、ガスト自体への親しみにどこまで残るかです。

根拠・参考資料と、この記事の見方

企画の内容と発言は各社の公表資料に基づきます。過去の施策との共通点や、藤澤さんを起点にした構成の意味を分析しています。採用理由の社内議論や、今回の実施結果を取材した記事ではありません。 出典の確認日:2026年10月21日。

[1] すかいらーくホールディングス:Chef RyoChan発表・本人とCMOのコメント

[2] すかいらーくホールディングス:至福のフレンチコース 2024年の発表

[3] ローソン:2025年7月のMrs. GREEN APPLEコラボフード

[4] ダスキン:Mrs. Donut コラボの背景と商品開発

[5] 阪神コンテンツリンク:Billboard JAPAN 2025年年間チャート発表

[6] すかいらーくホールディングス:トップメッセージ 2026年8月更新

[7] ガスト:Chef RyoChan メニュー・店内企画・グッズ案内

[8] ローソン:2025年のアプリでたまるよスタンプ

表紙は記事のテーマを表す生成イメージです。実際の商品・店舗・出演者・取材現場の写真や再現画像ではありません。

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