本文へスキップ

HYPEUP / TOPICS

フォロワーは増えたのに、売れない。SNSの数字と「買う理由」の距離

増えた数字を喜んだ後で、事業への貢献を聞かれる。そんな戸惑いを、SNSの失敗談、購買の研究、パルとヤッホーブルーイングの取り組みから考えます。

三つの異なる指標を一枚の報告書へ整理した、白と赤の編集図案

フォロワーが増えた。投稿もよく見られた。その報告の後に「で、売上は?」と聞かれたら、せっかくの手応えが急に薄くなる。SNSの数字と事業の数字の間には、たしかに距離があります。私は、その距離を担当者の説明力だけで埋めようとするのは、少し酷だと思います。数字が増えても買う理由が増えていない場合と、役立っているのに数字へ現れない場合を、一緒にしてしまうからです。

01 増えたのは、お客さまなのか、見てくれる人なのか

オプトのSNSマーケティング部門の責任者は、公開記事で、フォロワーを10万人まで育てても、サイト流入や問い合わせ、売上への貢献がほぼ変わらなかった匿名企業の例を紹介しています。事業目標がフォロワーの最大化へ置き換わっていた、という指摘です。[1] 企業名や集計条件は公開されていないため、ここでは支援会社が紹介した経験として読みます。

数字は動いていたが、ビジネスに紐づいていなかった

オプトの公開記事より

この話を「だからフォロワーは無意味」と受け取るのは早い。面白い投稿を読みたい人、懸賞へ応募したい人、いつか買うかもしれない人、すでに買っている人は、同じフォロワーの一人です。増えた数だけでは、その内訳は見えません。

こうした見栄えのする数字が、意思決定に結び付かないまま追われるとき、バニティメトリクスと呼ばれます。虚栄の指標という、少し辛辣な言い方です。ただし数字そのものが虚しいのではなく、その数字で何を判断しているかが問われています。

02 「好きな人がフォローした」と「フォローしたから好きになった」は違う

この違いを実験で調べたのが、2017年の研究「Does “Liking” Lead to Loving?」です。Facebookでブランドのページに「いいね」をすることが、その後の評価や購買を変えるのかを検証。単にページへ参加させるだけでは、ブランドへの好意や購買を直接高める効果は見られませんでした。[2]

もともと好きな人ほど、フォローも購入もしやすい。この選択バイアスがあるので、フォロワーの方がよく買っていても、「フォローさせたから売れた」とはすぐに言えません。古いFacebookの研究を、現在のすべてのSNSへ当てはめることはできませんが、因果の向きを考える手掛かりになります。

ここで問いたくなるのは、集めた後の体験です。投稿を読むたびに商品への理解が深まるのか。使う場面が思い浮かぶのか。その先で、誰かと話したり、試したり、買ったりしたくなるのか。フォローボタンを押す前後に、何が起きるかへ目を移します。

03 パルは、スタッフの発信を「買う場所」へつないでいる

パルグループの2026年サステナビリティレポートには、約1,800人の社内インフルエンサーと、SNSの延べフォロワー約2,400万人という数字が出てきます。後者は2025年11月時点の規模で、重複のない顧客人数という意味ではありません。[3]

私が気になったのは、大きなフォロワー数より、その後を担う人がいることです。店舗スタッフの自然な着こなしや日常の投稿を、自社EC「PAL CLOSET」へ接続。さらにブランドごとのデジタルSVが、投稿の反応と購買に関わるデータを見て、スタッフと発信を振り返る仕組みが示されています。

ECの成長には、商品や出店、アプリなど複数の要因があり、報告書からSNSだけの売上効果を切り出せるわけではありません。それでも、SNSを「人を集めて終わる場所」にしない構造は読めます。お客さまが服を選ぶときに欲しい、丈感や着方、人の雰囲気をスタッフが伝え、その関心を買う場所へつなぐ。投稿の評価を次の提案へ戻すところまで、仕事になっています。

04 ヤッホーは、ファンと一緒に商品をつくるところまで進む

「よなよなエール」のヤッホーブルーイングは、SNSの会話、イベント、問い合わせへの対応までを、ファンとの関係を育てる活動として扱っています。2018年の「超宴」は約5,000人、2020年のオンラインイベントには延べ1万人以上が参加したと公表しています。[4]

さらに2024年の「ヘイジーチャレンジ」では、開発中のビールをファンへ届けて感想をもらい、SNSで味わいを表現してもらう企画も実施。単に話題を拡散してもらうだけでなく、商品づくりの過程へ参加してもらっています。

これは共創と呼ばれる取り組みです。買って終わる関係から、商品や体験を一緒につくる関係へ進む。参加者数がそのまま売上増を証明するわけではありませんが、投稿の向こう側に「また関わりたくなる経験」が置かれています。パルと同じ型ではなくても、どちらもSNSの外に続きがあるのが興味深い。

企業の取り組み フォローの後に用意されていること
パルグループ スタッフの着こなしや日常の発信から自社ECへ。反応と購買データを、次の発信や商品企画へ戻す。
ヤッホーブルーイング 会話からイベントや試飲、開発中の商品への意見交換へ。ファン自身が関わる機会を増やす。

05 もう一つ厄介なのが、「役立ったのに、見えない」

一方、成果が見えない理由を、いつも商品への接続不足にするのも乱暴です。SNSで知り、後日ブランド名を検索し、購入する。そのとき、どの接点へ成果を割り当てるかをアトリビューション(貢献配分)といいます。

説明用の購買例。SNSで商品を知る、数日後に商品名を検索する、ECで買う。最後の接点を重く見る集計では検索の貢献が大きく見え、SNSとのつながりは読み取りにくい。
説明用の仮想経路です。特定企業の実際の顧客行動ではありません。オプトが説明するアトリビューションの問題を図示。使う計測方法によって、貢献の見え方は変わります。

最後にクリックした接点を重く見る集計なら、検索の貢献が大きく見えることがあります。だから「SNS経由の購入が計測されない」と「SNSが何も働かなかった」は同義ではありません。逆に、検索が増えたというだけでSNSの効果と決めてもいけない。セールや広告、商品の人気など、別の要因もあります。

06 数字を増やす人を、数字だけで追い詰めない

事例を並べて私が感じるのは、SNSの仕事を、投稿する担当者だけの仕事に閉じない方がよい、ということです。買う場所が分かりにくい、商品情報が足りない、店舗で話が通じない。それは、フォロワーを増やす腕前では解決しません。

フォロワーが増えたなら、まずその接点ができたことは喜びたい。そのうえで、その人たちが商品を知り、好きになり、関われる続きが、会社側に用意されているかを見る。売れないSNSを問い詰める話から、SNSで生まれた関心を会社が受け止められているかという話へ。事業につながるかどうかの分かれ目は、むしろそこにあるのかもしれません。

根拠・参考資料と、この記事の見方

事例の内容・規模は各社の公開資料によります。SNS単独の売上効果を算出したものではありません。オプトの匿名事例は独立に検証できないため同社の説明として紹介。Facebookの2017年研究と現在のSNSを同一視せず、図の購買経路は説明用の仮想例です。 出典の確認日:2026年10月21日。

[1] オプト・恵下麻理子氏:フォロワー増加と事業成果が結び付かなかった匿名事例

[2] Johnほか:Does “Liking” Lead to Loving?(2017年、原著論文)

[3] パルグループ:SUSTAINABILITY REPORT 2026、21ページ

[4] ヤッホーブルーイング:よな友ピースプロジェクト

KEEP READING

続けて読みたいトピックス

すべての記事を見る
この記事に関連するHYPEUPのサービス

数字から、次の一手を話せるチームへ。

自分たちの業務に置き換えて学ぶ、マーケティング研修をご覧ください。

マーケティング研修を見る
← トピックス一覧へ

©2026 HYPEUP Inc.