AIの回答に、もっと目立つリンクを付ける。Googleが10月15日に発表した変更には、素直に歓迎できる部分があります。払い戻しの窓口を探している人に、長い説明を読む前に、その窓口を渡す。これは検索が果たすべき仕事です。
しかし、サイトを運営する側として、この発表を「これでアクセスが戻る」とは受け取れません。リンクが見つけやすいこと、押したくなること、実際に外のサイトへ移動することは、それぞれ別だからです。
今回の画面変更を、Googleの説明だけで読むと、便利になる話で終わります。利用者の行動を調べた研究、Googleの広告事業、リンクが置かれる位置まで重ねると、別の問いが残ります。AIが元のページの役割を一部引き受けた後、サイトへ返ってくる価値は何なのか、という問いです。
まず、リンクのどこが変わるのか
Google検索の「AIによる概要」は、検索結果にAIの回答を表示する機能です。「AIモード」は、さらに質問を重ねられる会話型の検索です。通常の検索結果がページを選ぶ入口だったのに対し、こちらでは、リンク先を開く前に、整理された説明を読めます。
今回の発表には、回答文の中のリンクを上の方へ出すこと、公式の行き先を示す専用枠のテスト、ニュース記事のカルーセルの展開、関連記事の画像付きリンクなどが含まれます。[1]なかでも、役割の違う二つを見比べたいと思います。
払い戻しの人に必要なのは、まず払い戻し先
Googleが公表した一つ目の画面は、航空券の払い戻しの例です。回答の上部に、フォームや問い合わせ先へ進むリンク枠があり、その後に手順の説明が続きます。特定の用事を済ませる公式の行き先が限られるとき、そのページを目立つ場所へ出すテストです。

この配置は妥当です。利用者は、返金制度について詳しくなりたいのかもしれないし、既に条件を知っていて申請したいのかもしれません。後者にとって、AIの説明を読み続けることは回り道です。答えをつくる能力を優先するあまり、目的のサイトへ行くという単純な用事を遅らせてはいけません。
ここでのサイトの価値は、文章が詳しいことだけではありません。正式な条件を示し、申請を受け付け、結果に責任を持つことです。AIが手順を説明しても、その企業の窓口を代わりに所有するわけではありません。
関連記事は、答えを読んだ後に競争する
二つ目は、AI回答の末尾に出る関連記事です。Googleは、一部の回答で画像を添え、リンクを目立たせると説明しています。公式の手続き先へ直行する枠とは異なり、概要を読んだ人へ、さらに読む選択肢を示す場所です。

この画面例では、天候の説明の後に、画像付きの記事が並びます。記事側からすると、競争の順番が変わっています。クリックしてから説明を読んでもらうだけでなく、説明を一度受け取った人に、それでも読む理由を示さなければならないのです。
サムネイルが付くのは歓迎します。ただ、画像が大きくなっただけで、読者の疑問が増えるわけではありません。リンク先が同じ説明の長い版なら、もう十分と思う人もいる。今回の改善は、出口を見やすくしますが、外へ出る用事まで自動的につくってはくれません。
リンクがあるのに、押されない。まず観察された事実
その難しさを示すのが、Pew Research Centerの2025年の調査です。米国の成人900人の閲覧行動を分析したところ、通常の検索結果リンクを押した訪問は、AI要約ありで8%、なしで15%でした。AI要約の中のリンクを押したのは、要約が表示された訪問の1%です。[2]

これは2025年3月の行動と、同年4月に取得した検索結果を照合した観察調査です。AIが出る検索と出ない検索は、質問の内容も違います。同じ条件の人を無作為に分けた実験ではないため、「AIだけの効果でクリックが半分になった」とは言い切れません。
この注意点は必要ですが、サイト運営者が知りたいのは、その先です。AIを検索に入れることで、実際にサイトへの訪問が置き換わるのでしょうか。その問いには、画面を割り当てて比較した、今年の研究もあります。
今年の実験は、実際にAIモードへ切り替えて比べた
Wangらが8月に公表した研究は、米国のChrome・Google利用者を対象に、3日間の基準期間の後、7日間の検索画面を無作為に割り当てました。通常のGoogle検索を使う群などと比べ、AIモードへ割り当てた群では、外部サイトへのクリック率が18.8ポイント低下しました。行動分析の対象は1,100人です。[3]

ただし査読前の研究で、米国でAIモードの利用を強制した比較です。自由に選ぶ利用者全体や、今回の10月の画面変更、日本の現在の結果へ、そのまま当てはめる数字ではありません。
同研究には、目的のページへ行こうとしたのに、そのサイトについての説明が出る、という参加者の不満も記録されています。[3]これは、上で見た公式リンク枠が解消しようとする不便と重なります。Googleがこの研究を受けて変更したと公表したわけではありませんが、リンクの改善が単なる見栄えの調整でないことは理解できます。
私がこの研究から受け取るのは、AI検索は必ず失敗するという結論ではありません。AIの回答と外部サイトの訪問は、いつも補い合うわけではなく、置き換わる場面があるということです。引用の数を増やすだけで、その関係が解けたことにはなりません。
Googleの「流入は安定」は、個々のサイトへの約束ではない
一方、Google検索の責任者Liz Reidは2025年8月、自然検索からWebへ出るクリックの総量は前年比で比較的安定し、すぐ検索へ戻らないクリックは増えたと説明しました。[4]サイト側の不安に対して、Googleは検索全体の数字で答えています。
しかし、検索一回当たりに外へ出る割合が下がっても、検索回数が増えれば、クリックの総量は維持できます。さらに、同じ総量でも、ニュース、辞書、公式の手続きページ、商品ページの間で配分が変わり得ます。Google自身も、流入が増えるサイトと減るサイトがあると述べています。
つまり、全体のクリック数が保たれたとしても、自社の記事が以前と同じように読まれるとは限らない。私なら、検索全体が成長しているという説明を、自社の集客計画の根拠にはしません。自社がどの用事のために訪問されているのか、その入口ごとに変化を見ます。
「質の高いクリック」という言葉も同じです。Googleの説明では、すぐ検索へ戻らないことを指しています。問い合わせが増えた、売上が増えたという意味まで含めてはいません。滞在した事実と、事業への貢献は、企業の側で確かめる必要があります。
利用者、広告主、情報をつくる人。同じ利益ではない
Googleには、利用者を外のページへ送る仕事だけがあるわけではありません。Alphabetは2025年の年次報告書で、収益の70%超をオンライン広告から得たと説明しています。[5]
Googleは2025年5月、AIによる概要での検索・ショッピング広告の拡大と、AIモードでの広告テストを発表しました。複雑な質問に回答した後、商品やサービスが次の行動に合う場面で広告を示すという説明です。[6]AIの回答も、広告事業と切り離された場所ではありません。

この公式の説明動画では、機内へ犬を連れていく方法の回答を下へ進むと、犬用キャリーバッグの広告商品が現れます。質問の起点は、商品を探す言葉ではありません。それでも、回答を通じて分かった用事を、商品選びへつなげられる。Googleは、このような接点を広告主へ提案しています。
利用者は、いくつもページを開かずに用事が済めば助かる。広告主は、その用事に合う顧客へ到達できれば価値を感じる。一方、説明の根拠となる情報をつくったサイトは、引用されても訪問されなければ、従来の広告収入や読者との接点を失うことがあります。この三者の利益は、自然には揃いません。
広告があることから、Googleが自然検索のリンクを意図的に減らしていると断定するつもりはありません。しかし、Googleにとって役立つ検索体験と、情報を提供した一つ一つのサイトにとって採算の取れる検索体験は、同じではない。その前提は、公式の便利さの説明を読むときにも外したくありません。
企業サイトに残すべきは、そこでしか終わらない用事
では、企業の広報やマーケティング担当者は、今回の変更をどう受け止めるべきでしょうか。AIへの引用が増えたことを、訪問が増えたことの代わりに置くべきではありません。引用に認知の価値がある場合でも、サイトへの移動や問い合わせを実現したかとは、分けて評価します。
今回の二つの画面は、企業が持てる役割の違いを示しています。
| 公式画面での用事 | AIが説明した後にも、元のページに残る仕事 |
|---|---|
| 航空券の払い戻し | 正式な条件を示し、対象を確かめ、申請を受け付ける。正確な行き先と手続きが必要。 |
| 天候の記事をさらに読む | 取材した人の判断、元のデータ、現場の写真、異なる説明の比較を読む。回答の繰り返し以上の材料が必要。 |
メーカーなら、製品の対象型番、使用条件、改訂日が分かる正確なページ。サービス会社なら、申込みや変更、相談の条件を確定できる窓口。これらは、他者が要約できても、元の会社が責任を持って更新し続ける仕事です。
記事であれば、例えば「成功事例の共通点」を一般化するより、担当者がどの案を選ばず、何を見て判断を変えたのかを残す。調査なら、数字だけでなく、誰にいつ尋ね、何が対象外だったかまで示す。製品の使い方なら、実際の画面や条件の違いで、どこにつまずくのかを見せる。元を確かめに行く理由は、そうした具体的な仕事から生まれます。
これは、独自情報さえ出せばAIに引用され、アクセスが増えるという保証ではありません。それでも、検索への依存を残したまま、AIがまとめやすい類似の用語解説だけを増やす方針には、私は賛成できません。ページ数は増えても、元のサイトを選ぶ理由が増えるとは限らないからです。
出口の改善は歓迎する。送客が戻ったかは、別に測る
Google Search Centralは、AI機能のための専用ファイルや特別な構造化データは必要ないと説明しています。また、AIによる概要やAIモードからの実績は、Search Consoleの「ウェブ」の全体データに含まれます。[7]管理画面の総数だけを見て、特定のAI表示が増減の原因だと決めるのも早計です。
だから、担当者が持ち帰るべき問いは「AIに載ったか」一つでは足りません。どのページへ人が来て、そこで何を確かめ、何を終えたのか。説明がAIへ移った部分と、公式ページが引き受ける部分を分けて見れば、守る入口も、育てる情報も具体的になります。
私は、払い戻し先を回答の上へ出す変更を評価します。記事の画像付きリンクも、元の記事へ進む選択肢を見つけやすくする点で評価します。ただ、サイトの運営費や取材費に見合う訪問が戻ったかは、リンクの数では判定しません。そこには実際の行動と、サイト側の結果が必要です。
引用されるのは、情報として使われたこと。訪問されるのは、行き先として選ばれたこと。Googleが答えを組み立てる比重を増やすほど、企業や媒体は、この二つを別の成果として扱うべきです。今回の変更を集客の朗報とだけ読まず、自社が「確かめる場所」「用事を終える場所」として選ばれる理由を持てているかまで見る。それが、今の段階で取れる立場だと考えます。
根拠・参考資料と、この記事の見方
確認日:2026年10月23日。Googleの表示変更、2025年の観察調査、2026年の査読前実験は、対象時期・方法・単位が異なります。今回の表示変更の効果を測った数値ではありません。広告の画面は2025年の公式説明動画です。
[1] Google「More ways to explore the web with AI Mode and AI Overviews」(2026年10月15日)
[4] Liz Reid/Google「AI in Search is driving more queries and higher quality clicks」(2025年8月6日)
[5] Alphabet「2025 Form 10-K」SEC提出年次報告書(2026年2月5日)
[6] Google「More opportunities for your business on Google Search」(2025年5月21日)。広告の説明と公式動画。
[7] Google Search Central「AI features and your website」AI機能とサイト運営者への案内

