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AIに任せやすい買い物、任せづらい買い物。その境目はどこ?

商品の比較は頼みたい。でも、注文は自分で決めたい。消費者調査と推薦研究、Amazonの注文画面から、買う目的や返品の不安、選ぶ楽しみがAIの使われ方をどう変えるか考えます。

紫色の背景に三つの選択肢を思わせる図形。「どこまで任せる?探してほしい。でも、決めたい。」と置いたオリジナル表紙。

AIにおすすめの商品を聞く。条件に合う候補を並べてもらい、レビューも要約してもらう。それでも、最後は実物を見たり、別のサイトで調べたりして、自分で買う。こうした使い方は、AIを使いこなせていない途中の状態なのでしょうか。

10月22日に公表されたCriteoの調査では、AIから商品・サービスの提案を受けた後、総合ECサイトで調べる人、実店舗を訪れる人は、それぞれ39%でした。また、商品選びから決済までをすべてAIへ委ねるより、最終的な判断や操作は自分で行うことを69%が支持しています。対象は、生成AIの利用経験があり、2〜3カ月に1回オンラインショッピングをする20〜59歳の消費者312人です。日本人全体の割合を示すものではありません。[1]

AIがもっと賢くなれば、この人たちも購入まで任せるようになるのでしょうか。調査や研究を読むと、精度の向上だけでは説明できない理由が見えてきます。商品の比較だけを頼みたい人もいれば、注文まで済ませてほしい人もいる。返品の手間が気になる人も、自分で選ぶ時間を楽しんでいる人もいる。この記事では、その違いを、家電選びや旅行、Amazonの買い物代行の例から考えます。

AIに商品を探してもらうことと、注文まで任せることは違う

例えば「予算5万円で掃除機を探して」と頼む場合、AIの提案を見てから、買うかどうかを自分で決められます。「いつもの洗剤を買っておいて」と頼む場合は、AIがお金を使い、注文するところまで認めることになります。こうした検索、比較、注文、決済などをAIが代行する買い方を指す言葉が、エージェンティック・コマースです。どの作業を代行するかによって、ユーザーがAIに許すことは違います。

ネットプロテクションズのNP総研は、直近6カ月にネットで商品を買った20〜65歳の1,150人へ、AIに任せてもよい範囲を聞いています。2026年6月の調査を8月4日に発表したものです。「好みに合いそうな商品候補を探す」は37.2%、「口コミやレビューを要約する」は29.0%。一方、「購入・決済まで自動で完了」は2.2%でした。[2]

NP総研のAIへの委任範囲の調査図。候補探し37.2%、レビュー要約29.0%、購入・決済まで自動完了2.2%などを示す。
画像引用:NP総研/2026年8月4日発表、6月10〜12日調査。掲載画像全体を保持。画像を押すと拡大できます。

候補を探してもらうだけなら、合わない提案は読み流せます。注文まで任せると代金が支払われ、商品が届きます。気に入らなければ、返品や問い合わせも必要になります。「おすすめが役立つ」と思うことと、「このAIに自分の代わりに買ってもらおう」と決めることの間には、この負担の差があります。

Criteoの69%と、NP総研の2.2%は、調査対象も質問も違う数字です。そのまま引き算して、AIの利用が減ったと読むことはできません。共通して見えるのは、商品選びを手伝ってほしい気持ちと、購入を委任する気持ちを、同じ「AI利用」として数えない方がよいということです。

高額な家電でも、AIにスペック比較を手伝ってほしい

安い日用品なら任せられて、高い家電は任せられない。そんな分け方をしたくなりますが、NP総研の調査で、購入を手伝ってほしい商品の上位は「日用品・消耗品」21.8%と「家電・デジタル機器」21.4%でした。両者はかなり近い。これは自動購入を許す割合ではなく、買い物を手伝ってほしいという回答です。[2]

家電には、容量、寸法、電力、対応規格、価格、保証など、比べる項目がたくさんあります。失敗したくない高額品だからこそ、その比較を助けてほしい。価格が高いことは、AIを遠ざける理由にも、使う理由にもなります。

例えば、冷蔵庫の設置幅と予算、欲しい容量が決まっているなら、AIに条件を満たす機種を探してもらえます。一方、台所で扉を開けたときに邪魔にならないか、棚に普段の鍋を置けるか、動作音が気にならないかは、自分で確かめたい。寸法表を比べる作業と、毎日使いやすいかを決める作業は、同じ冷蔵庫選びの中にあります。

実店舗へ行く行動も、AIの推薦を信用していないという理由だけでは説明できません。先に条件で候補を絞り、その後で触る、相談する、保証を確かめる。その順番なら、店舗へ持ち込まれる疑問は以前より具体的になるはずです。これは調査から導く仮説で、今回の調査が来店目的まで測定した結果ではありません。

出張のホテル探しと記念日の旅行では、AIへの期待が変わる

出張なら、駅から近く、会社の宿泊費の上限に収まるホテルを早く探したい。記念日の旅行なら、一緒に行く相手が喜びそうか、特別な時間を過ごせそうかを考えたい。同じホテルでも、選ぶ目的は変わります。マーケティング研究では、機能や効率を重視する実用的価値と、楽しさや感覚を重視する快楽的価値を区別します。

Chiara LongoniとLuca Cianは、AIの推薦が人からの推薦と比べて、実用的な文脈で受け入れられやすく、楽しさを重視する文脈で受け入れられにくい現象を「ワード・オブ・マシン効果」と呼びました。背景にあるのは、AIは機能的な比較が得意で、人は喜びや感情を分かってくれそうだという受け手の信念です。AIの実際の能力を、商品別に格付けした結果ではありません。[3]

さらに2025年のPLOS ONE掲載研究では、旅行先を推薦するメール広告への反応を、出張のような実用目的と、ロマンチックな旅行のような楽しみを重視する目的で比較しています。2つの実験では、AIの推薦を含む広告の受け止め方が、旅行の目的によって変わりました。測っているのは広告への態度などで、実際の予約率ではありません。[4]

この見方を、身近な買い物へ置き換えてみます。いつも飲むコーヒー豆の補充なら、銘柄、量、予算、到着日を伝えれば、探して注文する手間を減らせそうです。同じコーヒーでも、友人への贈り物なら、「この店の豆を選んだ」という理由を自分で持ちたいかもしれません。

「コーヒーはAIに任せやすい商品だ」と一つに決めてしまうと、この違いを説明できません。同じ豆を切らさずに補充したいのか、友人のために特別な一袋を選びたいのか。商品カテゴリーに加えて、ユーザーが何のために買うかまで見ないと、AIに頼みたい作業は分からないのです。

買い物では、比較して迷う時間を楽しむ人も多い

Criteoの調査では、「迷っている時間が楽しい」が55%、「最終的な判断を下すときが買い物で一番わくわくする」が54%でした。一方、「悩んでいる時間を削りたい」は36%、「AIに最適なものを決めてもらいたい」は19%です。それぞれの回答は排他的とは限らず、同じ人が複数の気持ちを持つことも考えられます。[1]

CriteoのAI利用経験者312人への調査。迷う時間が楽しい55%、最後の判断が一番わくわくする54%、悩む時間を削りたい36%、AIに決めてほしい19%。別々の設問。
出典:Criteoの2026年10月22日発表からHYPEUP作図。対象は生成AI利用経験があり、2〜3カ月に1回オンライン購入する20〜59歳の消費者312人。複数の設問を並べた図で、購買段階の離脱率ではありません。

買うまでに時間がかかる理由には、分かりづらくて進めない場合と、比べることを楽しんでいる場合があります。入力のやり直しや、送料を調べ回る手間は減らしたい。それでも、服を組み合わせたり、旅行の宿を想像したりする時間は持っていたい。すべてを一つの「購買までの摩擦」として減らすと、楽しんでいた工程まで削ってしまいます。

ここで、ブランドがどんな楽しみを提供しているかも関わります。毎日使う消耗品では、余計な心配をせず補充できることが助かる。一方、贈り物や趣味では、選んだ経緯や、まだ見つけていなかった物との出会いが価値になることがあります。この違いを考えず、どのブランドにも最短の購入経路だけを当てはめるのは、もったいない。

この調査を読んで、AIによる効率化がかえって商品を選ぶ楽しさを減らす場合もあるのでは、と引っ掛かりました。ただし、楽しみのある買い物でも、AIが役立つ場面はあります。知らなかった服のブランドを紹介する、似た旅館の違いを説明する、好みに合うコーヒー豆を提案する。AIに一つへ決めてもらう以外にも、ユーザーが比較したくなる候補を増やす使い方があるからです。

AIに購入を任せると、返品の手間や配送の遅れも気になる

AIが選んだ商品が合わなかったとき、簡単に返品できるか。予定日に届かなかったら、贈り物として間に合うか。購入までAIに任せる場面では、商品の値段だけでなく、買った後に起きることも気になります。例えば、安価な贈り物でも、記念日に届かなければ、その日のために選んだ目的は果たせません。反対に、高額な商品でも、購入前にキャンセルや保証の条件を確認できれば、不安の一部は減らせます。

こうした、買い物で損をしたり困ったりする可能性についてのユーザーの認識を、マーケティングでは知覚リスクと呼びます。代金の損失だけでなく、返品に時間を取られること、贈った相手をがっかりさせること、個人情報を知らない販売先へ渡すことも含まれます。AIの提案がどれほど正確かという説明だけでは、これらの心配には答えられません。

洗剤の補充なら、「同じ商品番号だけを、上限額以内で注文する」と頼む場合と、「在庫がなければ別の香りも選んでよい」と頼む場合では、AIに認めることが違います。ユーザーが価格の上限、代替品の可否、配送日を指定できれば、意図しない買い物を減らせます。何でも自動で買えることより、本人が許可した条件でだけ注文されることが、使う決め手になる場合もあるはずです。

買い物の場面 AIに頼める作業と、ユーザーが確認したいこと
いつもの日用品の補充 同じ商品番号・数量で、予算内の商品を探してもらう。別商品への変更は、好みや使用条件に合うかを本人が確認する
新しい冷蔵庫 寸法や機能を比べてもらう。使い勝手、設置できるか、故障したときの修理対応は本人が確かめる
出張の宿 会社の規定、移動時間、料金に合う宿を探してもらう。予定が変わった場合の取消条件を本人が確認する
記念日の旅行 候補や口コミを整理してもらう。相手の好みや宿の雰囲気が特別な日に合うかは、自分で決める
趣味や贈り物 知らなかった商品を提案してもらう。提案を比べ、自分がその商品を選ぶ理由を考える
調査・研究を踏まえた説明例。商品別の委任率を測定した表ではありません。同じ商品でも、購入する目的やユーザーによってAIに頼みたい作業は変わります。

Amazonの買い物代行も、注文前の確認はユーザーが行う

AIに注文を代行してもらっても、購入前に何を買うかを本人が確認する。Amazonが2025年に米国の一部ユーザー向けベータとして発表した「Buy for Me」には、そうした手順があります。Amazonで直接売っていない他ブランドの商品について、ユーザーが購入を依頼すると、AIがブランドのサイト上で注文を進める機能です。公式説明には、配送先、税金や送料、支払い方法などをユーザーが確認する流れが含まれています。[6]

Amazon Buy for Meの公式紹介画面。サイズ、48ドルの価格、配送・返品情報と、ユーザーが押すBuy for meボタンがある。
画像引用:Amazon/2025年の米国向けベータ機能の公式紹介。公式GIFの一場面を静止画化。端末と画面全体を残し、左右の装飾背景のみをトリミング。画像を押すと拡大できます。

公式の紹介画面には、サイズ、価格、配送や返品に関する情報と、ユーザーが押す「Buy for me」ボタンがあります。AIが裏側で注文を進めるとしても、どの商品を依頼したかは本人に分かる。購入後の配送・返品・顧客対応は、販売するブランド側が担うと説明されています。注文を代行するAIと、商品を届けて返品に応じる販売者の役割も、分けて考える必要があります。

予測を自分で修正できると、アルゴリズムを使う人は増えた

自分も決定に関われることが、機械の提案を使いやすくするのではないか。この点を考える手掛かりに、Dietvorst、Simmons、Masseyの研究があります。最初の実験では、参加者288人が、高校生の情報をもとに、数学の標準テストでその生徒が全体のどの位置に入るかを予測しました。参加者は、自分の予測か、誤差があると説明された統計モデルの予測かを選べます。モデルの予測を修正できない条件に比べ、一定の範囲で修正できる条件の方が、モデルを使う人が多くなりました。[5]

人が機械の誤りを見て、その後は優れた予測でも使いたがらなくなることを、アルゴリズム嫌悪と呼びます。この研究は現行の生成AIによる買い物の実験ではなく、Amazonの機能の効果を証明するものでもありません。ただ、「精度が上がれば人は自動的に任せる」という見方を考え直す材料になります。機械の答えを丸ごと受け入れるか断るかだけでなく、自分が納得できない部分を修正できることも、利用を左右したからです。

買い物でも、条件に合わない代替品を断れる、支払う前に金額を確認できるといった手順は、単なる手間とは言い切れません。注文のクリック数を減らすだけでなく、ユーザーが「自分はこの商品を、この条件で買うと決めた」と分かることまで考えたい。そこを省いてしまうと、便利な代行機能を作っても、購入を任せてもらえない可能性があります。

AIで候補を絞ったユーザーに、店舗やブランドサイトは何を伝えるか

調査や事例を通して見えるのは、AIへの期待を「この商品は任せられるか」の一問で捉えるのは粗すぎる、ということです。同じ冷蔵庫でも、機種の比較はAIに任せ、店では扉の開けやすさを確かめ、注文は自分でする人がいる。その買い方は、AIの能力不足だけで起きるとは限りません。

AIが候補を絞った後に店舗へ来るなら、「何かおすすめはありますか」よりも、「この二つで迷っている」「自分の部屋ではどうか」「長く使った後はどうなるか」という疑問が増えるかもしれません。ブランドサイトにも、スペックを並べる役割に加えて、使う場面や修理、納得できる選び分けを示す役割が残ります。

広告やマーケティングの担当者は、自社商品をAIに推薦してもらうことに加えて、その後に来店・訪問する人の疑問も知りたいところです。冷蔵庫の候補を二つに絞った人へ、また商品一覧を最初から見せるだけでは足りません。寸法表にはない使い勝手や、故障したときの相談先を具体的に説明できるか。その答えは、店舗や公式サイトを訪ねる理由になります。

AIが商品を比較してくれるほど、店舗やブランドサイトでは「この商品を自分の生活で使えるか」への説明が問われる。すべての買い物を人からAIへ移すという話で終えるより、AIで調べた人が何を確かめに来るかに目を向ける。その方が、ブランドが用意すべき情報や接客も具体的になります。

根拠・参考資料と、この記事の見方

確認日:2026年10月24日。各調査は対象・設問が異なり、直接の増減比較をしていません。過去の研究は現行生成AIの能力評価ではありません。場面の表は編集上の説明例、Amazonは米国向け発表時の例です。

[1] Criteo/AIによる消費者の購買行動調査(2026年10月22日)。消費者312人とマーケター206人は別集計。

[2] ネットプロテクションズ/NP総研「AIに買い物を任せる時代は来るのか」(2026年8月4日)。EC利用者1,150人。

[3] Darden Ideas to Action/Luca Cianによるワード・オブ・マシン効果の研究解説(2022年4月22日)。原著はLongoni & Cian, Journal of Marketing 86(1), 91–108。

[4] Park & Son(2025)PLOS ONE 20(3), e0318719。旅行目的と推薦主体によるメール広告への反応を比較した2実験。

[5] Dietvorst, Simmons & Massey(2018)「Overcoming Algorithm Aversion」Management Science 64(3), 1155–1170。予測を修正できる条件の実験。

[6] Amazon「Buy for Me」公式紹介。2025年に発表した米国向けベータ、注文確認と配送・返品の責任範囲。

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