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Metaの規約変更は、なぜ反発された?企業のSNS担当者が知っておきたいこと

SNSで記事を紹介したい。それが、自社サイトの記事をMetaに使わせる許可にもなる?「AI学習」の文言を修正しても出版社が納得しない理由を、変更前後の比較と担当者の仕事から読み解きます。

Metaの規約変更と外部サイトの関係を問う表紙。米英で報告された適用予定の延期、10月30日から11月20日を示す。

表紙・本文の関係図:米英の団体の発表を基にHYPEUP作図。表紙の日付は英国団体が公表した延期です。

Instagramで新商品を紹介し、詳しい説明は会社のホームページで読んでもらう。企業のSNS担当者にとっては、いつもの仕事でしょう。

ところが、そのSNSを使い続ける条件に、ホームページにある別の記事や写真もMetaが集めて使える、という許可が含まれていたら。「投稿の担当なので」と、そのまま同意してよいか迷うはずです。

いま米英の出版社団体が反発しているのは、まさにこの問題です。FacebookやInstagramを運営するMetaが、企業などの商用利用に関する規約の改定を予告。その内容をめぐって抗議が相次ぎ、英国News Media Associationは10月23日、適用予定が10月30日から11月20日へ延期されたと発表しました。[1]

「AIに学習させる」という言葉が修正された後も、反発は続いています。なぜでしょう。出版社が困っているのは、AIの話だけではないからです。

記事をFacebookで紹介したい。それが、サイトの記事を使う許可にもなる?

まず、新聞社の仕事を思い浮かべてください。記者が取材し、編集者が原稿を整え、自社サイトに記事を載せる。Facebookには見出しとリンクを投稿し、興味を持った人にサイトへ来てもらいます。

このとき出版社がしたいのは、記事の紹介です。一方、米国の出版社団体News/Media Allianceは、改定案が、SNSのビジネスアカウントと関連するサイトの記事までMetaが自動で収集・利用する許可になり得る、と問題視しています。[2]

SNSに載せる記事リンクと、関連する自社サイトの記事・画像をMetaが収集する許可を分けて示す図。
米出版社団体の10月22日の公開書簡を基にHYPEUP作図。リンクの紹介と、外部サイトの利用許可が結び付くことへの懸念を説明しています。 拡大 ↗

ここで出てくる「クロール」は、プログラムがウェブページを巡回して読み取ること。「スクレイピング」は、ページから文章などの情報を取り出すことです。人が一ページずつ開く作業を、プログラムがまとめて行う、と考えると近いでしょう。

出版社側は、自分たちがSNSで紹介した記事だけでなく、サイトに蓄積したほかの記事も収集の対象になり得る、と読んでいます。一つの記事へ読者を案内することと、記事の中身を別の製品づくりに使わせることは、ずいぶん違う約束です。[3]

「AI学習」の言葉を消しても、「何に使うか」は分からない

当初の改定案には、集めた情報の使い道として、製品の開発や改善などと並び、英語の「train」が入っていました。ここでは、文章などのデータを使ってAIに学習させることを指します。

米メディアNieman Labが10月17日に報じたところでは、Metaは前日の16日にこの言葉を削除。同時に、利用目的をMetaの製品全般から、広告・ビジネス製品の開発や改善などへ書き換えました。[7]

報道された文言の変更。日本語は要約。
改定案 集めた情報を何に使うのか
当初の案 Metaの製品・機能を提供、開発、改善するため。使い道に「学習」も含む。
10月16日の修正 「学習」を削除し、広告・ビジネス製品の開発や改善などに使う、と変更。

MetaはNieman Labへの説明で、広告作成に使う生成AI機能の規約などをまとめ、分かりやすくするための変更だとしています。また、ニュースサイトを収集するための話ではない、とも説明しました。[7]

では、なぜ出版社は納得しないのか。「広告・ビジネス製品」と言われても、どの製品に、記事のどの部分を、何のために使うのかまでは分からないからです。出版社側は、そうした説明を、Metaのコメントだけでなく契約にも書いてほしいと求めています。[3]

例えば、自社の商品ページを読み取って、その商品の広告を作りやすくする。それなら担当者にも、何のために情報を渡すのかが見えます。ところが、広告と直接関係のない記事まで、新しいビジネス製品の開発に使えるのかとなれば、判断は変わるでしょう。

「ニュースサイトの収集の話ではない」という説明を、契約でも約束してほしい。出版社の要求は、そこまで具体的です。「学習」の一語が消えても、記事をどう扱う契約なのかがはっきりしなければ、安心して同意できないのです。

嫌ならSNSをやめればいい。出版社には、それも難しい

もう一つ、出版社が引っ掛かっている点があります。自社サイトの情報収集には同意せず、Facebookなどの企業向け機能だけを使い続けられるのか、という問題です。

10月22日に公開書簡を送ったNews/Media Allianceは、2,000を超える新聞・雑誌・デジタルメディアの出版社を代表する団体です。同団体は、改定案を受け入れないならMetaのサービスの商用利用をやめることになる、と批判しています。[2]

Metaの新規約に反対する米出版社団体の公開書簡の表題と、2026年10月22日の日付。
画像引用:米出版社団体/10月22日公開書簡の表題と日付。当時の要求を示す資料で、現在の適用日を示すものではありません。全文は出所リンクで読めます。 拡大 ↗

出版社にしてみれば、時間とお金をかけて集めた読者がFacebookにもいます。その人たちへ記事を届けたいのに、サイトの記事を使わせることまで条件になるなら、断る代償が大きすぎる。英国の団体も、延期を歓迎しながら、この選択を迫られる問題は解決していないと述べています。[1]

しかも、記事は集客の道具である前に、出版社の商品です。読者にサイトへ来てもらえば広告収入や購読料につながる。ほかの会社に記事を使ってもらうなら、使い道や料金を相談して契約できる。そうして取材や編集の費用を回収しています。

その記事が、SNSを使う条件として無償で利用できるものになれば、個別に条件を交渉する機会を失いかねない。米団体は、記事が、同じ読者や広告主を奪い合う製品の開発に使われることも懸念しています。[2]

特定のサービスが大きな集客先になるほど、条件に不満があっても離れにくくなる。これがプラットフォーム依存です。今回の争いで問われているのは、AIの技術だけでなく、その離れにくさを利用して、別の許可まで求めてよいのか、という取引の仕方です。

自社のSNS担当者なら、まず何をすればいい?

「うちは出版社ではないから関係ない」とは言い切れません。企業のサイトにも、社員が書いた解説、制作会社へ頼んだ動画、写真家に撮ってもらった商品写真があります。掲載している会社と、すべての使い方を許可できる人が同じとは限りません。

例えば、写真家に「自社サイトへ載せるため」と頼んだ写真。その写真をMetaの製品開発にも使わせてよいかは、元の契約を見ないと判断できません。SNSの担当者だけでは答えられない話が、SNSの規約変更として届く可能性があるわけです。

最初にすることは、自社のアカウントへ届いた変更通知を開くことです。海外で報じられた11月20日を、そのまま日本の自社アカウントの期限にはしないでください。通知から開く規約で、適用日と対象サービスを確認します。

サイトの情報収集に関する記載があれば、通知と規約のリンクを、サイトの管理者や素材の契約を把握している人へ共有する。広告運用を代理店へ任せているなら、代理店にもどの通知が来ているかを聞く。この段階で、投稿担当者一人の判断にしないことが大事です。

相談する相手 一緒に見るもの
SNS・広告の担当者 自社アカウントに届いた通知。どのサービスの、いつからの変更か。
サイトの管理者 規約が対象にしているサイト。どのページや素材が含まれ、収集を断る設定があるか。
制作・契約の担当者 写真や動画などの利用条件。自社サイトへの掲載以外に、どこまで許可できる契約か。

サイトで「収集しないで」と設定すれば済むのか

Metaは、サイト側の「robots.txt」というファイルで、収集プログラムの巡回を断る設定ができると説明しています。これは、プログラムに「このページは読まないで」と伝える仕組みです。ただし、パスワードを掛けてアクセス自体を止める仕組みとは違います。[7][4]

出版社側は、その設定を守る約束も契約に入れてほしいと求めています。また、広告を動かすために必要な収集プログラムまで止めると、使いたい機能に影響する、とも指摘しています。[3]

ですから、SNS担当者がインターネットで見つけた設定例を、そのままサイトへ入れるのは早計です。サイト管理者に、どのプログラムを止める設定なのか、広告やリンクの表示に影響しないかを調べてもらう。「規約に同意するか」と「サイト側で何を止めるか」は、両方を見ながら決める必要があります。

SNSで紹介することと、記事を使わせることは、選べるようにしてほしい

企業がSNSを使うのは、人に知ってもらいたいからです。そのために記事を書き、写真を撮り、読者を少しずつ増やしてきた。その仕事の結果が、条件を断りにくくする理由になるのは、やはり納得しづらい話です。

Metaの便利な広告機能を使いたい会社もあるでしょう。だからこそ、「この記事や商品情報を、この機能のために使ってよい」と選べて、「その使い方は断るが、SNSでの紹介は続ける」こともできてほしい。

Metaには、広告を作る便利さと同じくらい、許可する内容の分かりやすさにも力を注いでほしい。SNSで人に届けたい。そのために、自社の記事や写真を何に使わせるかまで、一緒に同意しなければならないのか。出版社が突き付けたこの問いは、会社のSNSを担当する人にも、決して遠い話ではありません。

根拠・参考資料と、この記事の見方

確認日:2026年10月26日。米英の出版社団体の公開資料と、Metaの広報説明・専門家への取材を含むNieman Labの報道を参照しています。文言の変更前後の表は、同媒体が掲載した条文の日本語要約です。出版社側の懸念をMetaの実施事実や法的な結論とは扱いません。日本語の改定原文全文は取得できておらず、日本の全アカウントへの適用日・適用範囲は検証済みではありません。自社向け通知と規約で確認してください。資料[5][6]はそのための公式リンクであり、全文を読めた資料として数えていません。

[1] 英国News Media Association/10月30日から11月20日への延期に関する10月23日の声明。

[2] 米News/Media Alliance/改定撤回を求める10月22日の発表。出版社側の立場。

[3] 米News/Media Alliance/10月22日の公開書簡全文。条文の引用、修正、Metaの説明と団体の要求。

[4] IETF/RFC 9309。robots.txtとアクセス認可の違い。1節・3節。

[5] Meta/商用利用規約の改定予告。自社向け通知から開き、対象・言語・適用日を確認するための公式リンク。日本語全文は本稿制作時に取得できず。

[6] Meta/商用利用規約等の変更案内。自社で確認するための公式リンク。制作側では全文を取得できず。

[7] Nieman Lab/10月17日の取材報道。16日の文言修正、新旧案の該当部分、Meta広報の説明と専門家への取材。

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