冒頭画像:プラザスタイル/9月29日発表の新制服。
「ソニプラ」で買い物をしたことのある人は、あの袋を覚えているでしょうか。海外の菓子や文房具を買い、青いロゴの袋を持って店を出る。中身だけでなく、袋まで少しうれしかった。
その店を継ぐPLAZAが、2026年10月、スタッフの制服をブルーと白を基調とした服へ変えました。きっかけは、社員やアルバイトから集まった、以前の制服が店のイメージと合わないという声です。[1][2]
新制服の紹介だけなら、色やポケットの説明で終わります。でも、なぜPLAZAにとって「店らしくない服」が放っておけない問題だったのか。この店が何を売ってきたかを振り返ると、制服は、商品の外側にあるブランドの価値を引き継ぐ仕事だと分かります。
「海外の物」を売りながら、まだ知らない暮らしを見せていた
PLAZAの始まりは1966年、銀座ソニービル地下2階のソニープラザストアです。アメリカンスタイルのドラッグストアを持ち込み、海外の商品や生活文化を紹介する店として生まれました。[5]

店内には、アイスクリームや飲み物を出すソーダファウンテンもあった。扱った物には、UNO、ぺリエ、E.G.スミスのルーズソックスなどが並びます。TBS NEWS DIGの取材は、これらを、新しい文化や習慣を届けてきた店の歴史として紹介しています。[6]
この組み合わせがいい。カードゲーム、飲み物、靴下。用途も値段も違うけれど、共通するのは、使った後の自分を想像したくなることです。見たことのない外国の物を手に取ることが、まだ知らない暮らしを少し試す体験になっていた。
店が選んだ商品を通じ、買う人が「こんな物を好きな自分」を見つける。PLAZAは、輸入品の仕入れ先であると同時に、好みの入口を作る編集者でもあったのだと思います。
スマホで海外が見える時代に、わざわざ店へ行く理由は何か
ところが、海外の流行はスマートフォンで見られ、商品を探す手段も増えました。外国製であることや、日本でまだ珍しいことだけに頼れば、店の特別さは削られていく。
2024年、PLAZA自身も、誰でも世界のライフスタイルへ触れられる時代になったと説明し、店の役割を更新しました。新しいスローガンは「HEARTS UP!」。日常の心拍数を上げるブランドを目指すとしています。[3]
ここだけ読むと、抽象的な言い換えにも聞こえます。しかし、当時のトップへの取材には、もっと踏み込んだ考えが出てきます。比較する相手は、ほかの雑貨店だけでなくテーマパーク。乗り物そのものより気分を変えに行く場所であるように、PLAZAも、立ち寄ると気持ちが変わる店にしたいというのです。[6]
私は、この競合の捉え直しには賛成です。店へ来る理由を安さや品ぞろえだけで説明すれば、より大きな通販サイトと競うことになる。一方、友人への小さな贈り物を探していたら、自分にも欲しい物が見つかる。そんな寄り道の楽しさは、商品名を指定して検索する買い物と違います。
ただ、テーマパークと言うだけでは、店は変わりません。狭い時間で何を見せるか、どの商品を隣に置くか、迷っている人へどう話し掛けるか。売り場の編集と接客に、その考えが表れて初めて、店へ来る理由になります。
青い袋を覚えている人へ、青い制服を見せる
そこで、新制服の色をもう一度見たい。PLAZAのポップさを表すなら、強い色を何色も使う方法もあったはずです。選ばれたのは、ブランドの象徴であるブルーと白を軸にしたストライプでした。[1][2]
上は公式サイトが紹介する1999年からの袋と、2024年からの袋です。店名や図柄は変わっても、青い色が記憶をつなぐ。今の店名を知らなかったとしても、見覚えを感じる人がいるのではないでしょうか。[3]
この色は、単に爽やかだから選ぶ青とは違います。長く買い物してきた人が見分けられる、店の手掛かりです。新しい制服がそれを着る人の側へ広げた、と私は読みます。商品棚のカラフルさを全部まねるより、店として覚えてほしい色へ絞る。売り場の中でスタッフを見つけやすくすることにもつながります。
デザインのテーマも、ルーツにあるアメリカントラッドを今の感覚へ捉え直すものです。変わるために、昔の店の記憶まで捨てる必要はない。「ソニプラ」の袋を覚えている人と、今のPLAZAでコスメを選ぶ人の間に、青い色を残しておく。60年のブランドが更新する姿として、私はこのつなぎ方が好きです。
「自分の好き」を売る店は、スタッフの好みをどう扱うのか
ただし、懐かしい色にそろえるだけでは、働く人は店のディスプレーになってしまう。今回の刷新で、色と同じくらい大切なのは、そろえない部分です。
PLAZAでは2023年に髪色が自由になりました。制服プロジェクトのインタビューには、スタッフの個性が見えるようになる一方、ベージュの落ち着いた制服とのずれを感じるようになった、という振り返りがあります。服を変える前に、働く人の自由が広がっていたのです。[2]

新しい服では、ワンピースかパンツスタイルかを選べる。以前は私服だった男性スタッフ向けにもジャケットが加わった。店員だと分かりづらかった問題を直しつつ、全員の身体を一つの形へ合わせる方法にはしませんでした。[1][2]
客には自分の「好き」を見つけてほしい。その店で働く人にも、自分で選べる余地がある。この二つがそろうと、売り場の言葉を信じやすくなります。制服の話は、ファッションの好みを聞く話であると同時に、会社が人の違いをどこまで受け入れるかという話でもあるのです。
ブランドの考え方を社員の経験や行動へ落とし込む仕事を、インターナルブランディングと呼びます。今回なら、楽しい接客をしてほしいと指示するより前に、本人が自分の姿を選べるようにする。その順序を評価したい。
心拍数を上げる会社が、背中を冷やさない服を作る
さらに、新制服には背中へカイロを入れるポケットがあります。ペンのインク染みを防ぐ工夫や、前かがみになっても邪魔になりにくいインカムの付け方も検討されました。デザイナーが店へ行き、スタッフの悩みを聞いて反映したものです。[2]
カイロは、華やかなブランド発表では主役になりにくい部品です。でも、冬の売り場で働く人にとっては、毎日身体で分かる会社の姿勢になる。客を楽しませるために、働く人だけが寒さを我慢していたら、理念は空回りするでしょう。
私は、こういう部分にこそ投資してほしい。店員の笑顔まで店の価値として語るなら、その笑顔を本人の気合いだけに任せない。着替えたときの気分、接客中の動きやすさ、寒い日の温かさまで、会社の仕事にする。
昔、ソニプラは、知らない外国の暮らしを試す入口でした。今も残してほしいのは、輸入品の珍しさだけではありません。まだ好みが決まっていない人が立ち寄り、何かを好きになって帰る、その余白です。青い制服を着た人たち自身も、自分の好みを楽しめる店であってほしい。その空気が売り場へ出てきたとき、今回の衣替えは、次の世代にとっての「PLAZAらしさ」になると思います。
根拠・参考資料と、この記事の見方
確認日:2026年10月27日。制服の経緯は公式社員インタビュー、歴代の袋は公式掲載資料、事業方針は2024年の公開取材に基づきます。青い色が記憶をつなぐという評価は編集上の読みで、認知調査の結果を意味しません。
[1] プラザスタイル/9月29日発表。10月1日の制服刷新、デザイン・選択肢・機能・制作体制。
[2] PLAZA/制服リニューアルの公式プロジェクトインタビュー。発端、髪色、現場の動作、アンケート・共有方法。
[3] PLAZA/2024年リブランディング特設。創業の背景と、日常の心拍数を上げるブランドへの変更。
[4] 繊研新聞/2024年2月20日、当時のリブランディングの報道。海外の生活様式に触れる環境の変化。
[5] PLAZA/公式ヒストリー。1966年の創業と商品・業態の歴史。
[6] TBS NEWS DIG/2024年2月20日、鈴木努氏への取材。ソーダファウンテン・取扱商品・テーマパークという競合観。





